表題の通り、
「自動詞と他動詞」の授業で生徒にどのようなノートをとらせるか
という文章を塾講師が書いてみたでござる。
ブログに晒して残しておくことで、今後の私の改善点が見つかりそうだし、改善の変遷も辿(たど)れるし。
ノートに残させる注意点3つとその意図
「自動詞・他動詞」に限らず、私が意識しているのは
- 視覚的に印象に残るノート
- 復習で見返しやすいノート
- 必要な情報"のみ"の簡潔なノート
という3点。
それぞれの意図も記しておきます↓
1:視覚的に印象に残るノート
初回授業で納得感をもって欲しい!...からに尽きます。
文字ばっかりだと小難しさや勉強の息苦しさを感じさせてしまうし。
参考書の文章をなぞるだけなら授業や黒板を使う意味が無くなってしまうので、絵心がない私でも私なりに図や表、イラストを用いるように心がけています。
「比較」の授業なんかは特に、私がお会いしたことのある講師の方々はもれなく絵を用いていました。
「わかりにくい」「覚えにくい」と感じさせてしまったら、その生徒は他の塾や予備校に行ってしまうし、何より自分が悔しいもん。
「あ、そういうことなんだ~」って感じてくれる納得感のための視覚的印象。
2:復習で見返しやすいノート
「自動詞・他動詞」で考えてみると、
●高校1年生は一番最初の「前期中間試験」の範囲である可能性があります。
「自動詞と他動詞」自体は扱われなくても、「5文型」の一部としてなら定期テストの対策という意味でも有効かな? 中間試験で出なくても期末試験で出そう*1。
●また、「自動詞・他動詞」は関係詞の識別の際、完全文か不完全文かの判定で必要になる知識でもあるのだよ~。
●そもそも、自動詞と他動詞の言い換え表現は、ストレートに大学入試で問われる基礎頻出事項だし...
等々今後必ず複数回見返すハメになるので、見返しやすさは重要。
3:必要な情報"のみ"の簡潔なノート
講師なので知識は当然生徒より持っているから、伝えようと思えば伝えたいこと/伝えられることはたくさんあります。
でも、一気に知識を詰め込みすぎると、生徒の頭はパンクしちゃう。
どれが重要でどれがオマケ情報かを識別する術(すべ)がない生徒にそれは酷。
たとえそれがいずれ生徒が必要になる内容でも、今回の授業にその知識は必要かどうかは考えなくてはなりません。
例えば、「時・条件の副詞節の中では、未来の内容でも現在時制」という時制の頻出ルールがあります。
きっと初見の生徒はwhen節・if節の「名詞節 or 副詞節の識別」でもハードなはず。
そこへ「これは単純未来のときだけで意思未来ならwill使えるときありまっせ~」と教えたら絶対混乱しちゃうもん。
授業の一貫性という意味でも、生徒の復習のしやすさという意味でも、簡潔さは保つよう心がけております。
自動詞・他動詞の位置づけ
あくまで私がもし授業をするとしたらの「自動詞・他動詞」の位置づけ。
①②と③④⑤を分かつのが自動詞・他動詞ではあるけども、「5文型」の授業のうちので「自動詞・他動詞」の識別や言い換え表現の学習が担うのは①第1文型と③第3文型だと考えています。
というのも、第2文型はそれだけで独立した授業をする価値があります。
「remain」とか「seem」や「appear」とかですね~。
入試で問われやすいものの数が限られているので(中堅私大なら知っておくべき動詞は20個弱くらいかな?)、覚えるべきだし授業で扱うべきです。
第4文型と第5文型は言わずもがな複雑なことが多いので、大多数の塾や予備校では、めいっぱいの時間を割くことでしょう。
そうすると、第1文型と第3文型はストレートに自動詞と他動詞の識別が必要であることや、第3文型をとる動詞の数の多さを鑑みると、①第1文型SVと③第3文型SVOを一緒に扱うのは妥当かなという認識です。
では導入から...
自動詞と他動詞に興味を持ってもらうための1~2分の話。
色々な講師が、自分で考えたり、師匠や先輩から受け継いでいる十八番があるはず。
I run in the shop.「私は店の中で走る。*2」
I run the shop. 「私は店を経営する。」
それぞれの単語は知っているはずなのに「in」の有無で「run」の意味が変わることを伝えています。
同時に、「自動詞・他動詞」がなぜ大切なのかという授業の意図も伝達します。
これは5文型の識別をさせる授業の導入でも使えるので、私はリサイクルしています♪
今思えば誰から教わったんだっけ?
この導入はノートに取らせなくてもよいと思ってます。
が、視認させるために板書する必要はあります。
唐突にコレを生徒に問うたら、知っている子はニヤッと笑うし、知らない子はボードと講師に注目してくれます。
パズルとしてノートに残す方法
表題にある「自動詞と他動詞」の授業で生徒が頭に入れるべき両者の情報は、
自動詞
- 直接、目的語をとることができない
- 目的語がなくても文が成立する
- 後ろに前置詞をつけると、目的語をとることができる
他動詞
- 直接、目的語をとることができる
- 目的語がないと文が成立しない
- 後ろに前置詞をつけることができない
という違いだと設定します。
これをそのまま生徒にノートさせたりプリントとして渡したりして、
「覚えておいてね~」は、よっぽどの生徒でないと通用しません。
この情報をいかに
- 視覚的に印象に残るノート
- 復習で見返しやすいノート
- 必要な情報"のみ"の簡潔なノート
の3つを満たす形にするかを考える/探す作業が必要です。
「自動詞 他動詞」
で検索すると、YouTubeの教育系・英語系の映像解説動画や、めぼしいブログがヒットします。
視覚的に参考にできそうな図を考案している人を探すには、画像検索もよさそうです。
それでもピンとこなければ、本業(同業者)の方の授業や著作物を拝見していきます。
以下は、安河内哲也先生*3のものを大幅に参考にしたものです。
「自動詞他動詞」の単元では、私はこれが一番分かりやすかったです。
模索している最中、むしろ視覚化している人の少なさに驚きました。
きっとそれほど難しいことなんだなぁ~
コレの良いところはパズルという身近なものを用いることで、視覚的に印象に残ることです。
いくつか例題で演習して生徒が法則性に気付いてきたら、以下のような図を要点のまとめとしてノートに残させます。
- 他動詞はSとOを直接結べるピースである
- 自動詞はOと直接結べない
- 自動詞とOを結ぶためには、前置詞というピースの力が必要
ということが視覚的に分かるのです。
そして、私なりに教える側としても副産物がありました。
パズルで自動詞・他動詞のノートを用いる副産物
結論から言うと私が思う副産物は主に2つです。
- 授業のハードルを下げてくれる
- 熟語の役割を伝えられる
授業のハードルを下げてくれる
よくありがちな文章を使います。
We discussed the matter.
We talked about the matter.
訳はほとんど同じです。
自動詞を用いた表現と他動詞の言い換え表現のお手本のような例文ですね。
言い換え表現を伝えるとき、SとOをつなぐために「左が凹・右が凸」の形をつくるんだよ、ということを伝えると、演習する意図に具体性と親密性が生まれるので、イメージしやすくなります。
「自動詞を用いた表現と他動詞の言い換えを覚える」
と考えながら作業のような授業を受けるよりも、
「SとOをつなげるパズルのピースの使い方をマスターする」
と考えたほうが、多少勉強の息苦しさが紛れませんかねぇ...(私だけかな?)
熟語の役割を伝えられる
高1生の授業で活用できた例です。
He depends on his parents.
という文の文型を振るときに、生徒によって意見が分かれました。
A:He depends (on his parents).
S V
B:He depends on his parents.
S V O
Aの場合:第1文型
きっと授業をしっかりきいてくれていた生徒です。「depend」は自動詞なので何の問題もありません。
Bの場合:第3文型
「depend on」という熟語を知っていました。知っていたが故に"ひとかたまり"と見做し、「depends on」をV、「his parents」をOとしました。私も文章を読む際はどちらかというとこのタイプのような認識で読んでいます。
SとOをつげるという働きにおいて、「自動詞+前置詞」は「他動詞」と同じだった旨のフォローを入れられますし、むしろ熟語を知っていたことを褒めてあげられます。
ここでパズルの布石を打っておくことで、授業に一貫性が生まれました。
例外事項・複雑な事項を後出ししてしまうことで生じる、英語が苦手な生徒を混乱させるリスクを回避できます。
一度学習した内容の復習・確認として処理ができたので、違和感なく「あーそうだった、そうだった」と生徒が思い出してくれる流れを作れました。
ちょっと懸念事項
●S+V+[名詞]の形だと、「②第2文型SVC」と「③第3文型SVO」の可能性があるので、
Vの後ろの[名詞]の有無で教えてしまわないようにしています。
「自動詞・他動詞」を扱う前に、文型を振る練習をして「S=C」と「S≠O」の識別方法を授業で扱ってから取り組むと良いですね。
●よくありがちな、「~を」を用いる説明は入れておりません。英語の前置詞に日本語の助詞をあてはめる考えは、紛らわしいものが多いと私が感じているからです。
「授業」は上手い人の上手い授業から吸収しよう:ノートと板書の大切さ
「上手い人の上手い授業から吸収する*4」というのを私は心がけています。
大手SKY予備校はもちろん、映像・個別・集団など様々な形態の塾・予備校に所属している講師の先生方の教え方を学ぶと、得るものは大きいです。
韓国のTOEIC講師など、非英語圏の外国人講師の英語の授業も面白いっすよ。
ポイントは「上手い人の上手い授業」であること。
全てが完璧な講師/先生は残念ながらいません。
「英作文といったら〇〇先生」「読解は△△先生がわかりやすい」「★★先生の仮定法の授業はスゲーわかりやすい!」「◆◆先生は親身で優しいし板書見やすいよね」
誰しもに突出している得意分野があります。
凄い人のさらに凄い部分、真似したい要素を吸収して自分のものにすれば、
- 講師としての自分の市場価値が上がる
- 生徒の成績向上や志望校合格に貢献できる
- 質の高い教育を目指すことで間接的に日本の将来に貢献できる
のです。
蛇足ですが、英語学や英米文学を専攻されている大学の教授先生のつぶやきも興味深く吸収し、自分の至らなさと伸び代を認識しながら楽しんでいます。
最近ではYouTubeにも、ものすご~~くわかりやすい動画が転がっているのでバリバリ参考にしています*5。
その「授業」の中には、教える内容の整合性(ストーリー性)やカリスマ性、口調やキャラクターの演じ方など様々あるけれども、板書もそのうちの一つ。
板書=生徒が復習するノートです。
私の場合は、思いつきでテキトーな板書をしないというmyルールがあります。
ナナメの文字や、歪んだ線の板書では、自信を持って商品として授業できません。
じゃあ綺麗に書けば良いのかというと、それだけではないのが難しくも楽しいところ。
教科書や参考書の内容で全員が理解できるなら、読み合わせで良いし、色マーカーを引かせれば済む話です。
その内容をさらに噛み砕き、必要な情報が簡潔に一目でわかるものが理想です。
...はい、私も偉そうなことは言えません。引き続き精進して参ります。
同業者、新しく塾講師になることを考えている人、高校生が万が一見ていたら、参考にするなり反面教師にするなりでご活用いただけると幸いです。
*1:ただね~、意識の高い新高1生以外は、まーーーったく中間試験を考えていません。新生活で手一杯な状況で、期待と不安を胸に抱いて青春しているのですよ!!!
*2:冷静に考えると店の中で走るって状況はおかしいね。でもツッコミどころがあると生徒が反応してくれるので良しとしています。
*3:おそらくこのようなパズル見覚えある人もいるのでは?安河内先生の場合はSVの結びつきの強さを表すような形状のピースだったり、第4文型と第5文型は特殊な形状のピースを用いていたりします。
*4:そのまんまコピペしたような内容や、他人の著作物をそのまま用いるのは所謂剽窃的で良くありません。というか完コピするなら、元ネタの人の授業の方がクオリティ高いから負けます。だからこそオリジナリティや自分なりの構成を元に参考とする「自分らしさ」が必要です。
*5:だからこそ塾の講師は日々研鑽しなければいけないし、課題管理や学習環境の整備で差別化を図って付加価値を創造していかねばならないのさ...。