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アニメ:安藤愛莉『2014年8月31日日曜日午前6時45分』感想と視聴のススメ

仕事で辛いことがあったら、ノスタルジーに浸れるような画像やシネマグラフGIFを集めて見ています。

疲弊したカラダが自然と癒しを求めているのかな?自愛しなきゃ...

さて、画像やら何やらを集めていたら、こんな作品に出会いました。

タイトル「2014年8月31日日曜日午前6時45分

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www.youtube.com

あらすじと概要

制作者:安藤愛莉

武蔵野美術大学 造形学部 視覚伝達デザイン学科 2013年年度卒業

世界観・舞台設定は「タブレットに残っている、最後の新聞配達の日の記憶」。

電子化によって新聞配達が終わってしまい、その最後の日がタイトルにある日付、2014年8月31日日曜日です。

以下、制作者のコメントと作品概要。

自分の空想の空間をもとに制作した、約5分間のアニメーション。描いた一枚の絵から、その絵の外の空間、建物の構造へと想像を膨らませました。

朝、タブレット端末で読書する男の家に新聞が投函される。新聞を取ってくるまでの間に、男は奇妙な世界に迷い込む。草花が茂り虫の飛び交う空間。庭園は図書館の廊下へ繋がる。廊下を進んだ先には、カプセルに入れられた植物、古びた自動掃除機やスマートフォン。そのとき、その手にある新聞はぼろぼろのタブレット端末に姿を変える。

実はここは未来であり、男にとっての現在の景色。前半の現実味のある世界は遥か昔、2014年8月31日日曜日午前6時45分前後、過去の遺物であるタブレット端末に残された記憶だ。電子化が進み紙が消えようとしている時。最後の新聞配達の日だった。その時代では宇宙での植物栽培を試みているが、今は宇宙から草木の減った地球へ植物を送る時代。社会は宇宙に築かれている。しかし生活はデジタルからアナログに戻り、人は紙の本を読み、鉛筆で字を書く。

人々は躍起になって植物を育て、地球に還ることを夢見ている。

背景画の魅力がすごい

どうやら安藤さんは在学時からアニメーションの背景画家を志望していたようです*1

明確な目標があると、努力を向ける方向性が定まって、パフォーマンスの効果を最大限にしてくれるので素晴らしいですね。

自分の夢(というより目標)が自分のやりたいことであること、その実現のための努力や切磋琢磨の成果がこの卒業制作作品に反映されていることが読み取れる気がします。

制作過程として一枚の絵から構想を膨らませているので、当然どのシーンで静止させても一枚の「絵」としても魅力的です。

例えばこんな感じ。

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3:30付近

 

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2:57付近

 ふつくしい...

ただ「綺麗に描けている絵だな」という感想に留まらず、この絵の中の世界に行ってみたいと思わせる魅力があります。

どこか懐かしさを感じさせるノスタルジックな雰囲気と、現実離れしたファンタジー性が調和しており、私は大変堪能させていただきました。

アニメーションの世界観

では、この作品の魅力の源泉でもあるノスタルジー(郷愁)とファンタジー(幻想)はどこから生まれているのか?

それに対する答えとして、絵を描くにあたっての安藤さんの空想と世界観設定ではなかろうか

という結論に至った次第ですので、ちょっと詳しく書いてみます。

ノスタルジー(郷愁)の側面

新聞配達が終わり、電子化されるというということは、

アナログ→デジタル

の移り変わりです。

ところが、このアニメーションのアナログ→デジタルの変遷の境界線である2014年8月31日日曜日は、「記憶」でした。

実際の社会は宇宙に築かれていて、宇宙空間での植物栽培を試みています。

さらに、草木の減った地球に植物を送ることまでしてしまっている!

最後のシーンをよ~~く見ると、古くなったタブレットを置いた後、紙の本を本棚から選ぼうとしているのが分かります。

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本棚から本を物色する姿。4:25付近。

デジタル→アナログ

に再び回帰するこの世界観の設定が、アナログを懐かしむ郷愁的な雰囲気を醸成しているのではないでしょうか。

ファンタジー(幻想)の側面

 そもそもノスタルジーとファンタジーの親和性は高いです。

王道で郷愁のみを感じられる例としては、「夏の入道雲」「駄菓子屋と路地裏」がモチーフの絵ですね。

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夏の入道雲。谷田部透湖「木の葉化石の夏」より。

夏の入道雲や駄菓子屋の路地、夏祭りの風景などは、現実で見ようと思えば見られるものです。

ただそれらは、子どもの頃の記憶が想起されて郷愁を感じさせるトリガーとなっているわけですよ!

 

一方で、非現実的、幻想的でも郷愁を感じてしまう絵もあります。

あり得そうであり得ない。

そしてどこか心惹かれてしまう。

ちょっと胸が縮こまって「あぁ...」って気持ちになるような絵です。

 

安藤さんの作品はまさに、自身の空想から構想を広げたことで、「あり得そうであり得ない魅力ある世界観」が体現されています。

全体感想・参考URLなど

YouTubeの再生回数は、2019年4月7日(日)現在で4,388回再生でした。

もっと伸びても良いかなと思います。

ちょっと調べると、この作品は

INTERNATIONAL STUDENTS CREATIVE AWARD 2014に入賞していることがわかりました。

宝石の国の美術・美術監督で安藤愛莉さんのお名前がヒットしましたが、これはもしやご本人!?

 

もし本人であれば、夢の実現が着実に叶っていますね。