インディーアニメを漁(あさ)っていたらクオリティの高い作品に出会いました!
クオリティの割に再生回数が少ない気がします。
インディーズで高クオリティ
動画時間10分超で見応えありつつ、モーション・背景・BGMにも感嘆させられます。
メジャーではなく同人の自主制作3DCGアニメというから驚きです。
- モーション:あからさまな変な挙動などは一切ありません。小さいところも拘(こだわ)っていると思います。細かい一例を挙げると、雨の雨粒が地面や岩に落ちた際の"跳ね返り"がよく見るとちゃんとあります。
- 背景:どこで静止しても一枚絵になるクオリティ。以下本編から映えそうな3箇所を抜粋してみました。この雰囲気が好きな人おるんやないかい? 作品制作者の「薫。」さんが総監督を務めるROLL Projectのサイトによると、背景制作にかかる費用を約1/4に抑えつつクオリティを安定させた工夫についても言及されています。
- BGM:緊迫感漂う音楽・焦燥感を駆り立てる音楽・冬の透明感漂う音楽etc...この作品の雰囲気作りに一役買っているのは間違いないでしょう。調べてみるとサウンドトラックが1,500円で販売されていましたよ。10分の作品のサントラが売られているとは思わなかった...
アニメ「不溶の銀」オリジナルサウンドトラック - にとぱんBOOTH - BOOTH
メジャーでは出来ないようなやりたいことを、本気で目指してやっているのだなと感じました。
ストーリーと描写
あらすじ
主人公は新米ハンターのアイリーン・ウォルシュ。冬山で狩りをしている際に1匹の子どものオオカミと出会います。どうやらアイリーンの母親は亡くなっており、猟銃を携えた母親の写真の横にはオオカミも写っています。新たな1人と1匹のペアが爪痕の正体と闘い、春に成長するまでのお話です。
描写の感想
私としては10分があっという間でした。むしろ「アイリーンと仔オオカミが狩りの鍛錬をして成長していく姿」「熊との戦闘でリベンジが成功するまで」「熊とのバトルシーン」の描写がもっと欲しいです。ダイジェストのようにシーンが展開されていたので、熊を倒すまでの成長過程を視聴者と共有させてくれたら、もっと感情移入ができそうだなと思いました。それでも、本編の繊細な脚本の続きが気になるように描写されていましたし(写真立てなんかはまさにその一例)、バトルシーンはアングルも音楽もシチュも良く、視覚でも聴覚でも盛り上がりました!
また大筋からは逸れますが、吹雪いている冬と花が咲く春でアイリーンの服装が同じである点や、仔オオカミに缶詰をあげる際に缶を開ける動作の描写が省かれている点などに若干違和感を抱いてしまいました。きっと背景やBGMへのクオリティと拘りが感じられるからこそ、そこは妥協せずやってくれるといいな、というこの作品を視聴した一視聴者の勝手な所感です。
例えば、私はまったく銃には疎いのですが、メジャーのアニメやマンガでも銃はけっこう指摘される例の一つですよね。「持ち方ちがうよ」と言われても私には門外漢なのでさっぱりですが。
だからこそ「これでもか」というほど細部に至る拘(こだわ)りが伝わる作品は、その情熱が人の心を動かすのだと思います。
だから作品を作るのは大変です。どんな人が見ているかわかりませんから。
創作をしている人はみんな尊敬します。
作品の概要やあらすじ・制作者情報など
吉武薫『不溶の銀』
地を這う寒風は、悠く彼方から巡り、運命を変えるー。
新米ハンターのアイリーンは、狩りの最中に仔狼と出会う・・・。
学生を中心に約4ヶ月で制作した3DCG自主制作アニメーションです。
制作者のTwitterはこちら。頻繁に呟いています。
受賞歴
- ASIA GRAPH 2019 in Tokyo 動画(アニメーション)作品公募部門 - 優秀作品
- 三鷹の森アニメフェスタ2018 第16回インディーズアニメフェスタ - 市民審査賞
- 学校法人日本教育財団 HAL東京 未来創造展 2018 - 銀賞
- KDCC 北九州デジタルクリエーターコンテスト2018 - 入選
- 第12回 TOHOシネマズ学生映画祭 - 入選
参考リンク
・前述した、吉武薫さん(名義:薫。)の自主制作プロジェクト『ROLL Project』のサイトです。
・ニコニコ動画にも投稿されています。
・銃の描写についての画像や、その他面白かったので
筑波嶺夜想曲 華麗なる少女マンガの世界(その1):大きかったり小さかったり