年が明け1月に入ると、卒論や卒制シーズンになる。
美大生や専門生が卒業制作として「自主制作アニメ」を投稿する時期だ。
これが私の【回顧&発掘シリーズ】の密かな楽しみで、いろいろネットを巡回して探していた中、この作品に出会った。
あらすじ(世界観)
ちょっと不思議な世界の、ごはんの準備。
本編が2分半だからあらすじもクソもないが、練られたストーリーを楽しむというよりは、ぼんやりと眺めながら世界観を楽しむことを趣(おもむき)とした作品。
この作品の魅力
引き込まれる世界観
この人は「ROOM」という自主制作アニメも「おばけとこどもアニメーション」の1年前に自身のyouTubeに投稿している。
ここでも、あの「おばけ」と「こども」が登場するのだ。
これはこれで趣深く、観た後にちょっと心が温かくなるのでオススメ。
さらに、制作者のツイッターを拝見したら分かるが、この2つの作品には(まだ?)描かれていない「おばけ」と「こども」の画が投稿されており、制作者の創造した、頭の中にある世界観の土台が盤石なことが窺える。
世界観がしっかりしていれば、視聴者も心置きなくドップリとその世界に没入できるから大事なことだ。
制作者の相原ふうさんは、楽しみながら、愛を込めて、入念に、二人が生活する世界の世界観とそのアニメ作品を制作したであろうことが、視聴者である私には感じられた。
きっと視聴した多くの人もそうで、時間をかけて練られた「魂」が入っているモノだからこそ人の心を打つアニメーションになっているのかな。
登場人物二人の関係性
「こども」に声優が充てられてはいるが、「おばけ」と会話は交わされない。
「おばけ」が「こども」にお茶を淹れてあげても、お礼は言わない。
演出上の意図であってもそうでなくても、個人的にはこれが良いと思う。
それだけこの二人にとって「ごはんの準備をする」のは日常になっており、友人関係というよりも家族関係くらいの親密さだ。
ここで面白いのが、この世界の二人にとっての日常の2分半のワンシーンの切り取りは、視聴者にとっては当然非日常なのだということ。
非日常だからこそ興味を惹かれ、日常だからこそ安心が生まれる。
相原ふうさんの大学の先輩である、ラーメンズの小林賢太郎氏の言葉を借りればこんな感じ。
「日常の中の非日常ではなく、非日常の中の日常を描く。一見すると異常な世界観だけど、その世界の住人たちにとってはいつもの出来事。それが心地良い。」
制作者の紹介
すでにツイッターではバズっていた。相原ふうさんのクリエイター活動を応援したいという人は、下のような投げ銭BOXで応援も出来る。
まとめ
全体的な世界観を楽むべき作品ではあるが、細部も見ると「実はよく見るとコンロが逆向き」「流しの下にあるマットの柄が好き」など、新しい発見も出来る。
短い時間だから何度も観られるし、何度も観ると新たな発見もするだろう。
創作にかけた苦労や楽しさの片鱗を妄想しつつ、たまに冷たいけれどちょっぴり温かい二人の世界観に浸りに訪れるといい。