未完結ブログ

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玉川真吾『PUPARIA』自主制作アニメを視聴した。

既存の枠組みが溶けつつある今の時代だからこそこの作品が響くのだと思いました。

 

何かが大きく変容しようとしている

それを私達は目撃することしかできない。

Something is about to change drastically

We can only be witnesses to it.

 

pupariaとは、puparium「蛹(さなぎ)の殻、囲蛹殻(いようかく)」の複数形です。

作品冒頭では「蛹夢」と書かれています。

当然見慣れない単語ですから、タイトルの意味は何だろうかと考えてしまいますよね。

タイトルの意味・制作者の思い

後載する制作プロセス映像では、4:00付近から、以下のような主旨の発言をしています。

「今の世界では自分たちが信じてきた意味や価値が溶けているように感じていて、拠り所にしていたものがどんどん崩れ落ちている。それはみんなが心のどこかでうっすら感じていたことだと思う。このままでは今までの僕たちではいられない。でもその先に何があるのかが見えない。そんな中で『この物語が正しい』という言い方の物語は作りたくなかった。別の方向性から、見る人を包み込むような、後ろから支えるような世界観を作りたくて、一度形にしてみたくて作った。」

 

まさに今の時代に対して私たちが漠然と思っていることではないでしょうか。

この既存の拠り所が溶けるのが、幼虫から成虫になるサナギの過程でドロドロに溶けることと重なりますね。

そんな混沌とした世界から先へ進むに当たって、一方的に与えられた正解へ進むのではなく、一人ひとりがその混沌を掻き分けて自分の考える方向に進んで良いんだよ、と思わせてくれる気がしました。

 

この『PUPARIA』の作品では絵コンテを作って全体の概観を設計することはせず(計画をしてしまうと予定調和になり作業と化してしまうから)、玉川さんが湧き出てくるものに従って制作しています。

そんな制作過程にも玉川さんの思想・思い・考えが込められているのがわかります。

効率だったり目先の商業視点に一様に偏ってしまうことにとらわれず、多少遠回りでも好きなように創作をすれば、長い目でみても良い作品・良い循環になるのでは?という提起も含まれています。

 

今の世界・今の私の状況と、この『PUPARIA』で玉川さんが込めた(込めてしまった)思いが相互反応して、この作品は私のハートに響きました。

 

こちらで玉川さんご本人が語っていますので、併せて視聴してみてください。


「どこで止めても絵として成立させる」

絵柄や背景は一切逃げずに妥協無しで描かれています。

 

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0:32付近

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2:30付近

関連情報・参考URL

・第7回新千歳空港国際アニメーション映画祭 日本コンペディション部門 ノミネート 

アニメーター玉川真吾の自主制作アニメ『PUPARIA』 どこで止めても圧巻の密度…! - KAI-YOU.net

PUPARIAとは (ピューパリアとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

クオリティの割に再生回数が少ない自主制作アニメを見つけた:吉武薫『不溶の銀』

インディーアニメを漁(あさ)っていたらクオリティの高い作品に出会いました!

クオリティの割に再生回数が少ない気がします。

インディーズで高クオリティ

動画時間10分超で見応えありつつ、モーション・背景・BGMにも感嘆させられます。

メジャーではなく同人の自主制作3DCGアニメというから驚きです。

  • モーション:あからさまな変な挙動などは一切ありません。小さいところも拘(こだわ)っていると思います。細かい一例を挙げると、雨の雨粒が地面や岩に落ちた際の"跳ね返り"がよく見るとちゃんとあります。

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静止画だと伝わらないので雨粒の跳ね返りは映像を是非見てみてください。
  • 背景:どこで静止しても一枚絵になるクオリティ。以下本編から映えそうな3箇所を抜粋してみました。この雰囲気が好きな人おるんやないかい? 作品制作者の「薫。」さんが総監督を務めるROLL Projectのサイトによると、背景制作にかかる費用を約1/4に抑えつつクオリティを安定させた工夫についても言及されています。

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本編2:04付近

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本編4:35付近

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本編10:03付近
  • BGM:緊迫感漂う音楽・焦燥感を駆り立てる音楽・冬の透明感漂う音楽etc...この作品の雰囲気作りに一役買っているのは間違いないでしょう。調べてみるとサウンドトラックが1,500円で販売されていましたよ。10分の作品のサントラが売られているとは思わなかった...

アニメ「不溶の銀」オリジナルサウンドトラック - にとぱんBOOTH - BOOTH

メジャーでは出来ないようなやりたいことを、本気で目指してやっているのだなと感じました。

ストーリーと描写

あらすじ

主人公は新米ハンターのアイリーン・ウォルシュ。冬山で狩りをしている際に1匹の子どものオオカミと出会います。どうやらアイリーンの母親は亡くなっており、猟銃を携えた母親の写真の横にはオオカミも写っています。新たな1人と1匹のペアが爪痕の正体と闘い、春に成長するまでのお話です。

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写真立て:アイリーンの母親?とオオカミ

描写の感想

私としては10分があっという間でした。むしろ「アイリーンと仔オオカミが狩りの鍛錬をして成長していく姿」「熊との戦闘でリベンジが成功するまで」「熊とのバトルシーン」の描写がもっと欲しいです。ダイジェストのようにシーンが展開されていたので、熊を倒すまでの成長過程を視聴者と共有させてくれたら、もっと感情移入ができそうだなと思いました。それでも、本編の繊細な脚本の続きが気になるように描写されていましたし(写真立てなんかはまさにその一例)、バトルシーンはアングルも音楽もシチュも良く、視覚でも聴覚でも盛り上がりました!

また大筋からは逸れますが、吹雪いている冬と花が咲く春でアイリーンの服装が同じである点や、仔オオカミに缶詰をあげる際に缶を開ける動作の描写が省かれている点などに若干違和感を抱いてしまいました。きっと背景やBGMへのクオリティと拘りが感じられるからこそ、そこは妥協せずやってくれるといいな、というこの作品を視聴した一視聴者の勝手な所感です。

例えば、私はまったく銃には疎いのですが、メジャーのアニメやマンガでも銃はけっこう指摘される例の一つですよね。「持ち方ちがうよ」と言われても私には門外漢なのでさっぱりですが。

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だからこそ「これでもか」というほど細部に至る拘(こだわ)りが伝わる作品は、その情熱が人の心を動かすのだと思います。

だから作品を作るのは大変です。どんな人が見ているかわかりませんから。

創作をしている人はみんな尊敬します。

作品の概要やあらすじ・制作者情報など

吉武薫『不溶の銀』

地を這う寒風は、悠く彼方から巡り、運命を変えるー。

新米ハンターのアイリーンは、狩りの最中に仔狼と出会う・・・。

学生を中心に約4ヶ月で制作した3DCG自主制作アニメーションです。

制作者のTwitterはこちら。頻繁に呟いています。

受賞歴

  • ASIA GRAPH 2019 in Tokyo 動画(アニメーション)作品公募部門 - 優秀作品
  • 三鷹の森アニメフェスタ2018 第16回インディーズアニメフェスタ - 市民審査賞
  • 学校法人日本教育財団 HAL東京 未来創造展 2018 - 銀賞
  • KDCC 北九州デジタルクリエーターコンテスト2018 - 入選
  • 第12回 TOHOシネマズ学生映画祭 - 入選

参考リンク

・前述した、吉武薫さん(名義:薫。)の自主制作プロジェクト『ROLL Project』のサイトです。

roll-project.com

ニコニコ動画にも投稿されています。

・銃の描写についての画像や、その他面白かったので

筑波嶺夜想曲 華麗なる少女マンガの世界(その1):大きかったり小さかったり

 

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サムネイル:本編7:15付近

 

一見くだらないことに全力をかける青春もいいじゃん。(インディーアニメ紹介)

このアニメの展開を要約すると

・パンを咥えて女子高生が「遅刻遅刻ぅ~」

・曲がり角でぶつかってボーイ・ミーツ・ガール展開

というお約束にならないので、お約束展開にもっていこうとする少年の話。

www.youtube.com

主人公に共感しやすい

NARUTOロック・リー似の主人公「拓郎」に感情移入がしやすい。

拓郎は冴えない男子高校生。

ザ・平凡で突出したモノがいままでなかったであろうことが推測できてしまう。

お遊戯会では木の役。部活でも万年補欠。

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大多数のわたしたちは世の中の平均的立ち位置で、普通で、凡庸で、そんな平均的で目立たない存在の「拓郎」が、冴えない自分を変えようと、納得いくまで頑張ってみようといろいろ努力する。

私たち視聴者が拓郎の視点・拓郎の気持ちに立ちやすい。

し、拓郎の視点に一緒に立つことで視聴者も自分を変えようとする前向きさが得られる。

 

アニメの導入部分も

  • パンを咥えて女子高生が「遅刻遅刻ぅ~」
  • 曲がり角でぶつかってボーイ・ミーツ・ガール展開

という「お決まり」を連想しちゃう。

お決まり展開か?→ならんのかい!→お決まりを目指せ!

という流れ。

  • 何でそんなくだらないことに真剣に努力するの?www
  • 女子高生メッチャ避けるやんwww

というのも面白さや共感を演出しているのかな。

真面目な場面でテキトーに、逆にどーでもいい場面で真剣に振る舞ったり、

日常の中で非日常的な出来事が、逆に非日常の中で日常的な場面があったり。

笑いをこらえなきゃいけない葬式や説教の場面で、余計に面白くて吹き出しそうになる。

ギャップや緩急があると笑いにつながりやすいよね(適当)

くだらないことに全力をかけるのが青春

大人になって子ども時代を振り返ると、なんでこんなことで悩んでいたんだろうということで悩んでいた。

でもそのちっちゃい悩みが、のちのち良い思い出になる。

一見くだらないことに全力をかける青春もいいじゃん。

いや、くだらないことに全力をかけるのが青春じゃないか!

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靴がこんなになるまで努力したのか...

何もしなければ、拓郎は良い思い出があまり無いまま卒業してしまっていたかもしれない。

でも「曲がり角で女の子にぶつかる努力」をしたおかげで最後の卒業間際で(多少)努力は実り、努力を費やした日々が拓郎だけの思い出にきっとなるんじゃなかろうか。

振り返ったときに笑える思い出を持っていたいね。

第二ボタンが消えている!?

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何か吹っ切れて納得した顔

これはなにかの暗示か?

そんな大袈裟なモノではないだろうし、最後のバトル(?)で外れたのだろう。

ただ、制作者が第二ボタンの外れた拓郎のシーンでラストを締めるのには、なにかしらの意図を感じざるを得ない。

第二ボタンと食パンが十字路に隣り合って落ちている!

作品の概要やあらすじ・制作者など

「ROMANCE OF THE TURN」

京都芸術大学(当時:京都造形芸術大学)の卒業制作のようです。

第11回TOHOシネマズ学生映画祭ショートアニメーション部門準グランプリ受賞作品

これは、ロマンを追う一人の男の物語。

冴えない高校生の横切拓郎が遭遇したのは、毎朝同じ時間、同じ曲がり角に現れてはヒラリとかわしていく“少女”。彼女と出会うため、拓郎はぶつかる特訓を始める......

企画・制作/野村ゼミ

声の出演/横切拓郎:高坊佳樹 峰田:舩戸元 友人A:泉貴文 担任教師:重信大介 拓郎の母:白神はる香 曲がり角の少女:松林美佑

作画・背景・CG・仕上げ・撮影・音響/木村拓

音楽/葉上誠次郎

音響監督/池尻百芳

スペシャルサンクス/田口雅敏 植田真樹 太木裕子

監修/野村誠

脚本・監督/木村拓

twitter.com

参考リンク

食パンくわえた美少女追いかけて?TOHOシネマズ学生映画祭に行ってきた - U-NOTE[ユーノート] - 仕事を楽しく、毎日をかっこ良く。 -

↑こちらに木村拓さんご本人の写真が載っております。

TOHOシネマズ学生映画祭でグランプリを受賞しました! | ニュース | キャラクターデザイン学科 | KUA BLOG

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『コンビニ仏』・他【インディーアニメ紹介】

 

趣味で深夜のブログ巡回・アニメ巡回をしていたら、シュール系で手軽な長さのインディーアニメをみつけたのでご紹介。

以下、全て同一人物の方の作品。

『コンビニ仏』

こーゆー発想があったか...!

と思わせるような作品。

www.youtube.com

2分で収まる長さ。

この作品をアップロードしているYouTubeアカウント名「Cheap Sweets」のごとく駄菓子感覚でサクッと楽しめました。

じわじわ来る系のアニメ。

これを見たときの私は割と心が荒(すさ)んで病んでいたのだけれど、

おもわず「...フフッ...」って笑ってしまった。

静止画では伝わらないので、動画で見て欲しい。

 

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そんな目でコッチを見ないで...

この『コンビニ仏』以外にも仏様のシリーズがある。

reunion

こっわ。

冒頭はもうBGMと合わさってホラーかと思った。

www.youtube.com

 「これは深夜に見たらダメなやつやん」と思いつつ、

最後まで見たら安心した。

むしろ女の人が勘違いとはいえ巻き込まれて可哀想!

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薄暗い路地をこんな絶妙な顔の人形?みたいなモノが追いかけてきたら怖いわ。

セグウェイに乗っているみたいにスーッと移動するのが不気味なのかしら。

夜に見ても大丈夫です。

『常時ヒーロー』

困っている者の味方。

常に子供の前ではヒーローであらねばならない。

そんなヒーローの矛盾と葛藤と皮肉。

www.youtube.com

スーパーヒーローだったり、悪vs正義の味方的な勧善懲悪の王道作品だったり

いずれも依然として健在だけれども、

最近では悪役にも悪役の正義観があることにフォーカスした作品も増えつつある。

一例を出すと、ポケモンロケット団とか。

魅力的な悪役という存在は、時に作品を引き立てる。

こんなものを思い出した。似たような2chコピペもある。

正義の味方

  • 自分自身の具体的な目的がない
  • 相手の夢を阻止するのが生き甲斐
  • 常に何かが起こってから行動
  • 受け身の姿勢
  • 単独〜少人数で行動
  • いつも怒っている

悪の組織

  • 大きな夢、野望を抱いている
  • 目標達成のため研究開発を怠らない
  • 日々努力を重ね、夢に向かって手を尽くしている
  • 失敗してもへこたれない
  • 組織で行動
  • よく笑う 

民明書房刊『世界の秘密組織集:一の巻~正義と悪、その系譜~』より

 悪の組織が会社組織と似ていることから、私を含めた視聴者側の共感を得やすくなっているという理由もある。

...ちょっと脱線した。

悪役も完璧な悪ではないし、正義の味方もいつも完璧ではない。

悩んでいる怪獣。子供を見るやいなやその怪獣を蹴ってしまうヒーロー。

お互いのギャップ萌えと皮肉さがイイネ👍

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「やっちまったなぁ...」って考えてそう。

「ヒーローも人間だし、こーゆー場面現実でもあるよなあ」

って思いながら見させて頂いた。

『旅立ち』

真面目そう。綺麗だなぁ。

でも突っ込みどころがある。

乗り物。

もし続きがあれば見たい。

www.youtube.com

サムネイルにもなっている、これから旅立つであろう城?都市?

を見つめて登場人物が立っている姿がきれい。

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これ遊園地やデパートの屋上とかににあるアレだよね?

 

『うさなわとび』

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あーあ、子供泣いちゃった。

動きで笑わせるのずるいよなー。

www.youtube.com

2017年に投稿されていて、他のものより再生数が伸びていたから見てみた。

一番の見所はやっぱり最後だと思う。

かわいいウサギが高速で縄跳びしたらシュールだもん。

 

仏様が募金を半ば強要したり、

ホラーとみせかけてハートフルだったり、

正義の味方が悩んでいる怪獣を蹴ったり、

真面目な旅立ちだけど乗り物がアレだったり、

かわいいウサギがヌルヌル縄跳びしたり、

笑いには「ギャップ」が必要なのかと認識しながら

笑わせていただいた。

 

この5作品以外も面白い

「Cheap Sweets」さんはチャンネル登録者数114人(06/07/2020現在)。

バズっているもの以外は平均3桁再生回数。

もっと伸びてもいいのになぁ。

コメント欄から推測する限り、趣味として不定期に更新されているようなので、気長に待ちたいと思う。

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【雨降って地固まる】中舎康平:自主制作アニメ「想い雲」感想と視聴のススメ

「もやもや」「どんより」といった言葉は、雲の様子も人の心も表すことができます。

「雨降って地固まる」 という諺(ことわざ)は、天気で人間関係を表しています。

実写でもアニメーションでも、映像作品では天気と登場人物の心理状態がリンクした(というより意図的に制作者によってリンクが施された)シーンはかなり多いです。

 

今回紹介したい作品は『想い雲』

「雨降って地固まる」的なストーリーの、

クオリティの高い自主制作アニメーションです。

www.youtube.com

作品概要とあらすじ

●タイトル:『想い雲』 "a reflection of one's mind"

●作品の時間:5分49秒。

●あらすじ:

ふとしたことでカッとなり喧嘩してしまった女の子ふたりが、冷静になったあとも一晩葛藤しつつ、最後は心を開いて仲直りするお話。

●制作者:中舎康平

中舎さんのツイッターでは綺麗でほっこりするイラストやマンガの原稿が見られます。

中舎康平さんのツイッターはこちら
twitter.com

www.pixiv.net

●音楽:日向萌 

BGMはドビュッシーの「月の光」です。

タイトルを味わおう!-贅沢な「雲」描写-

「雲」のはたらき

『想い雲』というタイトルについて、我々視聴者は思考を巡らせることができます。

題名に「雲」と入っているからには、「雲」に注目しないわけにはいきません。

英語の題名:"a reflection of one's mind"からわかるように、この作品での「雲」は、

登場人物であるふたりの女の子たちの内なる想いを映し出すものです

この作品は、考え耽(ふけ)って空を見上げるショートヘアの女の子の冒頭シーンからはじまります。

真剣で、寂しそうで、ちょっと悩んでいる表情です。

女の子の片側のほっぺたが赤く腫れています。

...何を考えて / 悩んでいるのだろう?...

その女の子の心中を、視聴者は雲の様子から窺(うかが)い知れるのです。

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1:24秒付近。きっと物思いに耽っている原因はコレ。

この雲のシーンの前に、実際何が起こったのかはハッキリ描かれます。

傷つけるつもりはなかったのに、平手打ちされた仕返しが思いのほか洒落にならないものとなってしまって、眼鏡の子に血を流させてしまいました。

その出来事を踏まえて、「雲」は地に足つかないふわふわとした不安定な心情を同時に表現しているのではないでしょうか。

 

その晩、ふたりは寝る前にそれぞれの家から、同じ月空を見上げます。

BGMがドビュッシーの「月の光」であるセレクトも、かなり作品に配慮していることがここでわかりますね。

それだけこの作品は考えられ、制作者の愛が込められているのです!

(違かったら恥ずかしいなぁ~)

 

翌日、仲直りしようと話しかけるも、眼鏡の子は無視してしまいます。

素直になれないふたり。

瞬間的な感情でイライラしてしまいますが、冷静になると悲しくて泣いてしまいます。 

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黒い雨雲。

 ここは「涙が溢れて泣く」という実際の行動と黒い雨雲の示唆からわかる通り、感情と行動が一貫しています。

つまり、泣いたのは素直な感情に基づく行動だったということです。

ここからはアニメだからこそ可能な表現が用いられ、仲直りするまでは圧巻です。

現実世界ではこんな雲は無いですし、見られません。

でも、眼鏡の子はこの泣いている雲を見て、ショートヘアの女の子のもとへ走ります。

眼鏡の子の雲が、泣いているショートヘアの子の雲をかき分けて近づきます。

雲なのか本人たちなのか曖昧になるほど、感情と行動がまったく乖離せず一致しているのがわかります。

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行動と感情(雲)が一致している素直さがわかるシーン。

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最後は「雨降って地固まる」。

もし「想い雲」がなかったら...

この作品での「雲」は、登場人物であるふたりの女の子たちの内なる想いを映し出すものだと私は書きました。

この作品における「雲」は、視聴者に優越感というか、心地よさを与えてくれる働きがあります。

この「雲」の描写がなくなったら、出来事を時系列順に描いただけのアニメーションになってしまい、視聴者からの同情、感情の動きは起こりにくいでしょう。

視聴者の感情が動かないと、「こーゆーストーリーのマンガあるよね~」みたいな、第三者を気取った批評家視点で見られてしまいます。

視聴者の経験や感情を刺激することで、「あぁ、私も似たような経験したなぁ」という登場人物の立場に即した当事者視点で作品をぞんぶんに楽しんでもらえます。

制作者も視聴者もハッピーになるかというらこそ大事な役割ですね。

 

事実描写だけすれば楽ですが、作品にはならないでしょう?

この自主制作アニメを色んな人が「素晴らしい!」と言う作品たらしめているのは、間違いなくタイトルにある「想い雲」という心情描写媒体です!

 

絵が暖かいのも魅力の一つだね!

作品の魅力でもありますが、これは中舎さんの絵の魅力の話ですね。

アニメ冒頭の風景シーンでも「おーきれいだなー」とおもいましたが、

私が感じるに中舎さんは人物描写に暖かさがあります!

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表情が豊かですよね。

笑う絵は白い歯を見せてニッカリと笑うし、

驚く表情は目ん玉真ん丸にして驚くし、

見ていて気持ちいい絵が多いです。

(中舎さんのアイコンの絵からしてほっこりした気持ちになるもん)

僭越ながら中舎さんの絵をTwitterから2枚ほど抜粋させていただきます。

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ね?魅力しかないでしょ!?

さいごに

ずーっとこの作品の感想を書きたいと思っていたんですけど、私の仕事が忙しくてなかなか書けませんでした。

そもそもアニメも見ている余裕がなかったです。

でも振り返ると、余裕がないとつまらない人間になるんですね笑

ここ最近の私を顧みるとまさにそう思います。

私にとってアニメ鑑賞はガソリンの一つですから、補給せねばなりません。

つまらない人間に仕事ができるわけない!

魅力的なものを魅力的だよとこのブログで言えないのはストレスだ!

ということで、無理矢理時間をひねり出して、私の心が感じたことを書いてみました。

 

私が魅力を感じた作品や制作者さんにこの声が届いて、

その方や作品が発展して、

私好みの作品が増えて、

数少ないこのブログを読んだ方が趣味の合う新たな作品に出会って、

みんなが幸せになれますように。

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